「静岡をアツくする会」のプレゼンテーションより

本陣ニュース

『静岡をアツくする会』でのプレゼンテーション

本陣の女将の村松由夏子です。先日、静岡市で活躍されている公認会計士の「白岩俊正さん」が主催している『静岡をアツくする会』で、自分の生き方や女将としての本陣に対する想いについて、プレゼンテーションさせていただきました。
私はごく普通のサラリーマンの娘として、静岡市で生まれました。7歳の頃から母が入退院を繰り返し、9歳の時に他界しました。小さかった私に、周りの人達がとても優しくしてくれた事に、今でも感謝の気持ちでいっぱいです。

 

【第2の人生!主人との結婚】

嫁ぎ先の本陣は、江戸時代から13代続く、お殿様が泊まられたという宿屋の本陣。現在は、本陣という屋号を引き継ぎ、八百屋を営んでいます。

結婚当初、主人からは「本陣を手伝わなくていいよ」と言われていました…が、3年前の平成24年1月、藤枝中央青果市場を経営していた父の突然の死により、主人が藤枝中央青果市場の社長を引き継ぐ事となりました。そして主人が抜けた本陣を私が引き継ぎ、4代目女将となりました。

最初の頃、青果市場に仕入れに行ってもなかなか買えない日が続き、更に競りでは大勢の人の前で大声で「馬鹿野郎!俺より高い金額をつきあがってシャラクセイ!!」と怒鳴られた事もありました。お客様からは、「今日も仕入れがなかったの?」、更には「お店を閉めちゃうの?」「旦那さんが居なくなったら、活気がなくなったね」と言われ、1人去り、2人去り…と、だんだんとお客様が減っていきました。

そんな時、亡き父から言われていた事、「代々続いてきた本陣を絶やさないで欲しい」という言葉が、私の方に重くのしかかり、当時その重圧に押し潰されそうでした。実際のところ、売り上げも下がり経営は悪化…私なりに一生懸命やっているのに、上手くいかない悔しさから、涙が溢れ止まらない日が続きました。早朝から夜遅くまでの仕事に疲れ果て、「もうお店なんかどうでもいい」「何のためにやっているのか分からない」と、沸々と溜まっていたモノが爆発し、主人の手にも負えないほど狂ったように暴れてしまった事もありました。

 

【被り物で”ムーブメント”】

そんな私を見かねた主人が、主人の幼馴染に相談したところ、「他の八百屋がやっていない事をしよう」「八百屋界のディズニーランドを目指せ!」「まずは”被り物”でいきましょう!」と提案して下さいました。ただ、急には恥ずかしくて行動には移せずにいたところ、なんとスタッフの雅子ちゃんが、イチゴの被り物を作ってきてくれました!!!

私は胸が熱くなりました。そして、「恥ずかしいなんて言ってられない!」「このイチゴを被って頑張ろう!」と店頭に立ちました。正直周りからは、冷めた目で見られ、穴があったら入りたい思いでした。けれども、以前『裸の男とリーダーシップ』という動画を観た時、「いかに”ムーブメント”を起こせるか?」「そのためには”継続すること”」と学んでいたため、私はやり続けました。そして半年ほど経った頃、お客様から「被らせてもらえますか?」と声を掛けていただくようになりました。店内では、お客様と一緒に被り物をして、楽しめるようになりました。今では『みんなの笑顔』が、壁一面に広がっています。

とてもありがたい事に、新規のお客様も増え、活気を取り戻しています。お客様から、「最初の頃は声を掛けると折れてしまいそうだった女将も、活気が出てきたね!」と声を掛けていただいた時は、嬉しさのあまり目頭が熱くなりました。

 

お客様、スタッフ、いろいろと提案して下さった方々、どんなに悪い結果が出ても「大丈夫、いつもありがとう」と言い続けてくれた主人、皆さんに支えられて今があります。本当にありがたいです。このプレゼンテーションを機に、主人から引き継いでから挫折を繰り返しながらもやってきた事を、私自身が振り返る事が出来ました。そして、これから何を”軸”にして、八百屋本陣を営んでいけば良いかを、確認する良い機会となりました。

 

イチゴの被り物

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